燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 工藤先生は少し考えた後、

「天馬の秘密なんだけどね……」
「うん、なに⁉」

 あたしは思わず食いつく。

「天馬ね、一緒に暮らしてからのつばめちゃんの音声、病院でも聞いてる」
「えぇ! そうなの? っていつ撮ってたの?」

「ま、天馬のことだから飄々と撮ってたと思うよ。昨日休憩室で、ヘッドホンで音楽聞いてるのかと思ったらちがった、あれは家でのつばめちゃんの笑い声だ、って噂になってた」
「そんなの言ってくれればいくらでも話すし、笑うのに」

「たぶん自然な君の声が聞きたかったんだよ」
「そっかぁ」


 あたしが言うと、工藤先生は苦笑する。

「天馬はちょっと……いや、結構な変態だよね。それは気を付けた方がいいね」
「あはは!」

 あたしは思わず笑ってしまった。
 でも、嬉しかった。拓海も、あたしといないときも、あたしのこと考えてくれてるんだって思って。


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