燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
拓海が夜勤のない時は、拓海と一緒にベッドに入るのが日課。
頬や額にキスされて、ほんとーーーーーに時々唇にキスされて、あたしはぎゅう、と拓海に抱き着く。
そうすると、拓海はいつも困ったように笑って、あたしの髪をなでる。
「拓海?」
「なに?」
「今日も聞かせて? 『つばめちゃん』の話」
あたしは毎日のように『つばめちゃん』の話をせがむようになっていた。
「つばめはこの話、好きだね」
「だって、16歳から25歳のあたしの話なんて、興味ないほうがヘンでしょ。しかも、拓海が見てたあたしなんだもん。何度も聞きたくなっちゃう」
「そっか」
それはまるで物語の一部で。あたしはその話を聞くのが大好きだった。
でも、どうやら25歳のあたしは、今のあたしより数段恋愛に不器用だ。
それも面白いのだけど。