燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「僕は当初、あまり気にしてなかったけど、つばめちゃんはそこからずっと麗子先生と僕のこと、付き合ってるって誤解してたみたい」
「自分はヒロインになれないって思ってたのかな。普通、女の子はさ、『相手が自分だったら……』って想像しそうだけど」
「つばめちゃんの一番は『東雲総合病院で三次救急を存続させる』ことだから。そのためにそんな舞台に上がってる場合じゃなかったんだと思う」
拓海は言う。「たぶん、婚約者は僕じゃなくて、他の人でもいいって、本気で思ってただろうね。実際、そんな感じだったし」
あたしは、ふふ、と笑う。
「でも拓海は諦めなかったんでしょ」
「そう。諦めなかったよ、もちろん」
「普通諦めそうだけどね」
拓海があきらめが悪いタイプで本当に良かった。
そうでなければ、今、あたしの目の前にいる拓海だっていなかったんだから。