燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「この3か月の記憶がないってホントか?」
天馬先生は振り返り、検査から一緒にいてくれた心療内科の工藤先生に聞く。
「本当にそうみたいだ。詳しくはカルテにも書いた」
工藤先生は頷いた。
どうやら、事故のせいで、私の記憶は3か月すっぽり抜けているらしい。
と言っても、それは、私にはさほど重要なことに思えなかった。
しかし、天馬先生は深刻そうな顔をすると、
「少し、二人にさせてくれ」
と言う。すると、もちろん、と言って、工藤先生は病室から出ていったのだ。
―――……ええっと。天馬先生と二人きりって、なんだか落ち着かない。