燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「だから、つばめちゃんがだれか医者と婚約するって話を聞いたとき、僕は真っ先に病院長室に走った。いろいろ考えてたの、全部忘れるくらいに必死に走った」

 拓海は息を吸う。


「『つばめさんを僕にください。僕はつばめさんが好きなんです!』」

「その言葉大好き」


 拓海があたしの父に言った言葉。これまで、何度も言ってもらった。
 まるでドラマのワンシーンだ。しかも自分に向けられた言葉なんて信じられない。


「恥ずかしいし、つばめちゃんには言ったことないけどね」

 拓海はそう言うと、何かを思い出したように嬉しそうに微笑んだ。


 あたしだけが知ってる、拓海のことば。
 あたしはそれが嬉しくて、ちょっとだけ、寂しい。


 すると、拓海は苦笑して、

「その必死すぎる様子がおかしかったって、ずっと病院長にもからかわれ続けてるよ」
「あはは」

 拓海、かわいそうだけど、笑えちゃう。
 それだけ必死になる恋愛ってステキだ。

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