燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「つばめちゃんは、毎回、一条と僕をくっつけようとしてくるし、最終的には『結婚しても心に決めた女性を思い続けるのは自由ですから』ときたもんだから、閉口したよ。心に決めた女性なんて、『つばめちゃん』なのに本人はいつまでもカヤの外にいようとする」

「『つばめちゃん』、おもしろい」


 あたしはいつのまにか『つばめちゃん』が好きになってた。
 鈍感にもほどがある。でもそれほど、病院のことばっかりで、自分の都合や気持ちなんて考えてなかったのかもしれない。


「だから入籍を急いでた。婚約して3年だよ? のらりくらりとかわされて……気が狂うかと思ったよ。やんわり『入籍はいつにしようか』と言っても『落ち着いたら』ってそればっか。もう嫌われてんのかと思った」

「それからあたしは記憶を失った?」

 あたしが言うと、拓海は頷いた。


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