燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「もう入籍したから、いいんじゃないの?」
あたしは思わず言っていた。
「え?」
「あたし、もう25歳のつばめだよ。拓海からたくさん話聞いて、自分が大人なんだって認識してる。身体だってそう」
「……それは」
拓海が困ってるのが手に取るように分かった。
「やっぱり最初は『つばめちゃん』がいい?」
「そういうわけじゃないんだ。つばめはつばめでしょ」
「なら」
「でも、もう少し。つばめが僕のこと、好きだと思ってからにしよう?」
拓海は優しく笑う。
「もう充分すぎるくらい拓海が好き。だーいすき! ……あたしってそんなに魅力ないのね」
「ありすぎて困ってる。傷つけたくないんだ」
「あたしは傷つかないわ。もし傷ついても大丈夫」
あたしが笑うと、拓海はあたしの髪をなでる。
まるで壊れ物に触るように大事に。