燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 すると拓海はあたしに手を伸ばし、あたしの頭をなでる。
 その心地よさに思わず許したくなる。でも、ぐっと唇を噛んで、怒っている、とむくれて見せた。

「……ごめん、今までは症例も病院で見てたんだけど。でも、病院より家で読んだほうがつばめと一緒にいられるでしょう」


 拓海はそう言う。
 ふーん。そうなの。ふーん……。


「……なら許す」
 あたしが言うと、拓海はよかった、と笑った。

 拓海はいつだって優しい。
 そういえば、拓海が怒ったところ、声を荒げたところすら、ここでも病院でも見たことない。

 拓海って怒ったりしないのかな?
 拓海が怒ってるとこ、想像つかないな。


< 179 / 350 >

この作品をシェア

pagetop