燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「そうだ。新しい先生も増えたし、再来週少しまとまった休みが取れそうなんだ。遠いところは無理だけど。車で2時間くらいのとこならいけるし、旅行でも行かない?」
拓海が言う。あたしは身体を前のめりにして拓海を見た。
「旅行⁉」
「うん、好きなとこ選んでおいて」
「いいの⁉」
「うん」
「拓海大好き!」
あたしは飛び上がって椅子を立つと、拓海に飛びつく。
すると拓海は、適当に見繕ってきたよ、と旅行のパンフレットや近県のホテルや宿の載っている本をあたしに渡してくれた。
「楽しみになっちゃって色々買っちゃったんだ」
「どこにしようかな」
あたしはそれらを見始める。
たくさんありすぎて迷っちゃう!
旅行ってことはあれだよね?
あたしと拓海って、『そういうこと』するのかな……。
あたしはもう、夢より、やっぱり記憶がなくなっているというほうがピンとくるようになっていた。
それは毎晩あたしがせがんで、拓海に16歳から25歳までの話をしてもらってるからかもしれない。
だから、あたしはもうしっかり25歳で、大人で、そういうこともきっと拓海とするんだって自覚だってある。
よくわからないけど、拓海が相手なら、キス以上にだって進みたい。しかもあたしたちは夫婦だ。