燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「つばめ?」

 拓海の声に、ハッと我に返る。

「どうしたの?」
「いや……ううん、なんでもない」

 あたしはパンフレットに目線を落としながら、

「旅行、早く行きたいね!」

と笑った。拓海も、そうだね、と笑ってくれた。
 その空間が心地よくて、あたしはずっとこのままでいたくなる。



 神様。もうこれから先、ずっと、『あたし』を『あたし』でいさせて。
 あたしを拓海のそばにいさせて……。


< 182 / 350 >

この作品をシェア

pagetop