燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「つばめ?」
拓海の声に、ハッと我に返る。
「どうしたの?」
「いや……ううん、なんでもない」
あたしはパンフレットに目線を落としながら、
「旅行、早く行きたいね!」
と笑った。拓海も、そうだね、と笑ってくれた。
その空間が心地よくて、あたしはずっとこのままでいたくなる。
神様。もうこれから先、ずっと、『あたし』を『あたし』でいさせて。
あたしを拓海のそばにいさせて……。