燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
その日は、昼に工藤先生がうちに来てくれていた。
拓海も夜勤なので家にいて、拓海は3人分のコーヒーを淹れる。
ちなみに拓海は本当はブラックじゃなくて、お砂糖1つ、ミルク少しが好きみたい。
でも、緊張する場面ではブラックを飲むんだって。変なの。
拓海は工藤先生とあたしにコーヒーを出し、
あたしの隣に座る。
あたしが、ありがとう、と微笑むと、拓海は、うん、と頷いて笑った。
そんなあたしたちをじっと見ていた工藤先生は、
「二人とも変わった、ね?」
と言う。
「ん? そんなことないけど」
と拓海。
「二人とも、僕の目が誤魔化せると思ってんの? 一応これでも心療内科のエキスパートとか言われてんだよ」
「それは怖いな」
くすくすと笑いながら、拓海が答える。
あたしは、工藤先生を見て、
「えー、どこまでわかるの⁉ 毎日……、うぐっ!」
拓海に口をふさがれて、あたしの言葉は途中で詰まる。
なによ。まったく、なにすんのよう。
あたしは拓海を、むう、とにらみつける。
「こら、つばめ。そういう事は人に言う事じゃないよ」
「工藤先生は他人じゃないわよー」
「はは、ありがとう。ほんと、仲良くやってるみたいでよかった」
工藤先生は楽しそうに笑う。
拓海は苦笑いした。