燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
ちなみに病院関係者全員、いや、天馬とつばめちゃんを除いては『天馬がつばめちゃんを好きなこと』をみんな知っていた。なんなら患者さんまで知っていた。
でも、なかなか前に一歩を踏み出さない天馬に、つばめちゃんのお父さんで病院長でもある東雲先生が、『つばめを、誰でもいいから医者と婚約させる』というウソを天馬の耳に入れることを思いついた。天馬の背中を押すためだ。
みんな、天馬はどうするのか。
こっそり、でも、目を離さないで見守っていた。
すると、その日のうちに天馬は病院長室まで走った。
それを間近で見ていた看護師曰く、『速すぎて姿が見えないくらいの速度』だったらしい。
そして、誰も聞いたことのない大声……病院長室の外にも聞こえるくらいの大声で、『つばめさんを僕にください。僕はつばめさんが好きなんです!』とやったのだ。
これにはちょうど病院を訪れていたつばめちゃんのお母さん、つまり、病院長夫人も聞いて大笑いしていた。