燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「そろそろちゃんと入籍しないと、トンビにさらわれるよ」
「……それもそうだけど。難しいんだよ。なんでか、僕と一条が付き合ってるって本気で思い込んでるし」
「あー……まぁね」
私がこれまでの数々の行為を思い出し、目をそらすと、
天馬は怒ったように目を細めて私を見る。
「……一条、恨むからな」
「あんたがはっきり言わないからでしょう」
「まぁ、それは、そうだけど」
「ほんとムッツリで準備だけ万端なのはいいけど、肝心かなめの自分の気持ちをちゃんとつばめちゃんに伝えとかないと振られるから」
「っていうか、ムッツリってなんだ。ムッツリって」
「自覚ないの?」
私が言うと、天馬は楽しそうに笑った。
ほんとね、もう君たち、そろそろ進まないと。みんなヤキモキしだしてるわよ?
―――でもその次の日。
私がもらった連絡は、無事に結婚にこぎつけた連絡なんかじゃなくて……。
つばめちゃんが男に襲われたらしい、という連絡だった。