燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
それからはとにかく大変だった。
つばめちゃんがその日の朝、会っていたという外国籍の男性が任意同行を求められて、警察署に来ていた。
その場面に天馬が居合わせて、天馬はその人が犯人だと思ってしまって……天馬はその男にとびかかった。
私もその場に居合わせて、天馬を必死に止めた。
いつも見てるし、体力あるし、天馬を止めるくらい大丈夫だと思っていたけど、私の力では全く役に立たないくらい、天馬は荒れていた。
それに一喝して止めたのは、刑事の大熊さんだった。
大熊さんは天馬を止めると、
「その手、大事なんだろ」
と天馬の拳を握る。
天馬は見たことのない形相で、大熊さんを睨みつけた。
「このままここで俺に暴力ふるったら一日留置所。それもいいかもしれないがな。頭を冷やすのには。……でもそしたら、今、彼女の近くにはいられなくなるぞ」
「……」
「それに、彼は参考人程度だ。俺の勘では、彼は違う」
なだめるような、低いその言葉に、天馬は少し落ち着いた。
実際にその日連れられた男の人は、朝につばめちゃんに会って、つばめちゃんと別れた後、つばめちゃんとは会っておらず、自分の引っ越しの準備を進めていただけだった。