燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
天馬はそれから、回診があるから、と踵を返して行ってしまった。
「アイツさ、やっぱりちょっと危なっかしいな」
「……」
工藤先生はまっすぐ私に視線を向けると、
「必死に犯人探してるみたいだけど、それ見つけて、どうするつもりなんだろうね」
「それは……」
「彼女は思い出してない。思い出しても証言が弱いと思う。彼女に残された体液で照合もしたんだろうけど、過去に同じものはなかった。もし余罪がないなら、起訴には持ち込めない。持ち込んだとしても記憶があやふやじゃ戦えない。それも分かった上で、見つけて……どうするつもりなんだろうね?」
次に、工藤先生の目が私を射抜く。
私はそれが自分に向けられた言葉だと思い、まっすぐに工藤先生を見つめていた。