燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
それから天馬は休暇に入り、つばめちゃんと旅行に行ったというのは聞いていたけど、
帰って来てみると、天馬の顔はずいぶん晴れやかになっていた。
休憩中、天馬は屋上でマンションのほうを見つめていた。
私は天馬の横に立つと、
「吹っ切れた顔、してるね」
「全部吹っ切れたわけじゃないけど……」
天馬は続ける。「でも、つばめが乗り越えようとしていることを、自分は何度も振り返って、バカみたいだなぁとは思った」
その前とは違う穏やかな声を聞いて、心底ほっとする。
「バカだって気付いただけでも進歩だね」
「ひどいな」
「その通りでしょ」
私が言うと、天馬は苦笑した。
「でも、色々……ありがとう」