燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 そして、天馬は、まっすぐにマンションの方を見ると、


「これからどんな状況になっても、つばめの全部を愛していける自信はついた」


とはっきり言った。

「……クサい」
「そうだな」
 天馬は笑う。


「でも、あんたらしいわ。『病院長室の中心で愛を叫んだ』くらいだもんね」


「……なんで知ってんだ」
「なんで知らないと思ってたの?」


 天馬の顔があまりにも間が抜けていて、私は思わず言ってしまった。「みんな知ってる。患者さんもみんな」


 天馬が驚いたような、恥ずかしそうな、何とも言えない顔で私を見る。
 こんな天馬の顔を見たのも初めてだ。

 私は思わず吹き出した。「ほんと、天馬らしい!」

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