燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「あぁ! だからか……」
天馬は突然何かを思いついたように叫ぶ。
「何が?」
「いや、あのときからやけに、患者さんや看護師からも、恋愛小説とか、女性を落とすテクニックとか、自分の恋愛話とか……とにかくその手のものを色々渡されたり、話されたりすると思ってたんだ」
「……」
「てっきり、長く独身だから心配されてるのかと思ってたけど」
なんでそんな勘違いするのよ?
そう思って眉を寄せて天馬を見ると、天馬は真っ赤になって、自分の口元を右手で覆っていた。
あ、この仕草、懐かしい。
天馬は昔から、恥ずかしい時とか、顔が赤くなりそうなとき、こうやって口元を隠すんだよね。
「……ほんと、天馬ってそういうとこ抜けてるよね」
私が呆れたように言うと、天馬はとても微妙な顔で下を向いた。
私はそれを見て、苦笑して続ける。
「今度もしさ……つばめちゃんの記憶が戻って、3か月前の状況に戻っても、あんたのそういうとこ、ちゃんとつばめちゃんに伝えた方がいいし、みんなのお節介もちゃんと受け取ったほうがいいよ」
私が言うと、天馬も苦笑して頷いた。