燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「なんだろう、つばめちゃん。どうしたんだろう。『記憶がなくなったら』なんて……」
私がスマホを見つめると、救急の看護師が走ってきた。
「一条先生―! 救急、すぐ入れますか? 今から搬送されてきます」
「はい! 今行きます」
私が大熊さんを見ると、大熊さんは手帳に番号をメモして、
「俺、彼女の家のほうに行ってみる。こっちにまた連絡あったら連絡して。これ俺の携帯番号」
私の手に押し込む。私は頷いた。
「はい」
「天馬は? 今どうしてる」
「この調子じゃ、救急で動けないと思う」
「……そうか。むしろ良かったと言うべきか。ってごめん、早く行って」
「すみません、あの……つばめちゃんのこと、お願いします」
私は頭を下げると、ぽん、と頭に大きな手が載せられた。
「任せろ」