燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
その日の救急は混乱していた。
やっとひと段落したころには、もうすっかり日は落ちていた。
その時、救急車で運び込まれたのは外国籍の大柄の男性。
そして、つばめちゃんと大熊さんが一緒にそれに乗ってやってきたのだ。
「つばめちゃん! 大熊さん!」
天馬は顔面蒼白だったので、私が三人の様子を見ると、
一番の重体はその男性で、つばめちゃんの外傷はほとんどなく、大熊さんは足を引き摺っていたが、こちらも命に別状はなさそうだった。
「天馬! しっかりしなさい! つばめちゃんは大丈夫。擦り傷だけ!」
私が言うと、天馬はまっすぐ大熊さんを見つめる。
「こいつは、犯人か?」
「……彼が、彼女を助けようとした」
頷くことも首を横に振ることもせずに、大熊さんは静かに告げる。
天馬の手が止まった。