燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 処置が終わり、男性は助かった。
 男はICUの観察ルームという離れた場所に入れ、つばめちゃんはICUのベッドに寝かせたまま、私は眠るつばめちゃんの横で、つばめちゃんの手を握る。

「つばめちゃん、本当にこれでよかった?」

 私が言うと、つばめちゃんの手が動いた気がした。
 その時、天馬がやってきた。


 私は天馬を振り返らないまま、

「どんな理由があっても、もう二度とあんなことしないで。救急患者を前に迷うなんてこと絶対しないで。救急は迷っている間に死んじゃうって十分わかってんでしょ」
「……すまん」

 天馬がつぶやく。
 それを待っていたかのように、つばめちゃんの目が開いた。


「つばめ!」

 天馬はつばめちゃんを、ぎゅう、と抱きしめる。
 つばめちゃんは天馬を見ると、

「天馬、先生?」

と心底、驚いた表情で言う。
 私たちはその瞬間、息をのんだ。

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