燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
母は、荷物を棚に置くと、
「荷物はこれね。あと、ICUから移動するとき忘れ物があったって。これ、つばめのでしょ」
とシルバーのスマホを差し出す。
飾りっ気がなく、ワンポイントの猫の絵柄が入ったスマホケースは、確かに私のものだ。
いつだってスマホにべったりとしているわけではないが、なければないで不安なものがスマホだと思う。
「スマホ! 探してたの。ありがとう!」
私は、それを受け取ると、母を見る。母はまだ赤い目のまま微笑んだ。