燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「あぁ……えっと、あ、ありがとうございます。それより、鈴木さん、術後の痛みはどうですか?」
「すっかりよくなりました。ありがとうございます」
「それは良かったです」
「先生、絶対読んでくださいよ」
帰り際、強引に手の中に本を押し込んで、鈴木さんは帰っていく。
自分の手の中にある付箋で太くなった漫画を見て、ふう、とため息を一つ。
「最近、やけにこういうの多いな……なんなんだ」
不思議でしかたない。
その時、看護師の向井さんが、
「そういえば、さっき高野さんが『すっぽん』持ってきてましたよ」
「……すっぽん、って……なんのために」
思わずつぶやくと、向井さんだけでなく、裏にいた数人の看護師が吹き出した。
「え、なに?」
「いえ……」
そう言いながらやっぱり笑ってる。
まぁ、救急じゃないときの外科は比較的平和だ。
そしてみんな最近、なんだか楽しそうでなによりだ。