燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 そんなことを思っていたとき、廊下の方から、愛しい声が聞こえてきた。

「What a relief it is to hear that!」
 あ、今日は英語か。これならわかるな。

 次の患者を診察室に呼ぶ前、その声を聞いて微笑む。
 彼女が楽しそうに笑う声は耳に心地いい声で、ずっと聞いていたくなる。


 彼女との婚約は、最近決まった。いや、決めたというべきか。
 彼女の父である東雲院長が、彼女を誰か医者と婚約させようとしていることを知って、院長に頼んで、自分を婚約者にしてもらったのだ。

 でも、まぁ、残念ながら、まだ自分に対しては
 彼女が同じような声で笑ってくれたことは一度もないのだけど……。



 そんなことを思っていると、向井さんが楽しそうにこちらを見ていた。

「あ、ごめん。次の患者さん呼んで」
「はぁい」

 ふふ、と笑いながら楽しそうに働く向井さんやほかの看護師を見ながら、やっぱりこの病院に、彼女とずっといられたらな、とそんなことを考えていた。

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