燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 父は診療に戻ると言い、母は一度家に帰って父の出張の支度をすると言った。
 私は母を見送りに、病院のエントランスまで母と一緒に歩いていく。

 少し疲れたような顔をしている母が心配でもあった。
 というか、心配の種はきっと私なんだろうけど……。

 なんだか自分が親不孝者と知らしめられたようで、ジクリと心が痛む。
 父も母も、私を大事に育ててくれたことは、私だってわかってるのだ。


「見送りなんていいのに」
 母は病院の外に出たところで微笑む。

「別に身体が痛いとかじゃないし大丈夫よ。……あのね、お母さんに聞きたいことがあって。お父さんのいるところじゃちょっと聞きづらかったんだ」
「なに?」

 私はじっと母を見ると、少し考えて、
「私と天馬先生って、この3か月本当に仲良かったの? なんだか信じられないんだけど」
と聞いた。

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