燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 それから一条がつばめちゃんに付き添って婦人科に行ってくれ、僕は僕で、つばめちゃんの両親に状況を話したりしていた。

 特に院長夫人、つまり、つばめちゃんのお母さんは、完全に動揺していて、何度も泣いて、つばめちゃんの顔を見てはまた泣いているような状況だった。このままではつばめちゃんをさらに動揺させる。そんな気がした。


「つばめさんは今あの事を覚えていないし、色々忘れています。もう思い出させないようにしませんか……」
「でも私にはそれは……無理そうです」

 つばめちゃんのお母さんは言う。

「確かに、ご両親と一緒にいると……お母さまから何か感づいてしまうと思います」

 僕は息を飲んで続ける。

「僕がつばめさんの面倒を見てはいけないでしょうか」
「それは……」
 院長も言葉に詰まった。


 僕は院長の目をまっすぐ見ると、

「僕なら彼女の前で表情は隠せます」

 そして続ける。「僕はつばめさんとすぐにでも結婚したかった。彼女のことが好きで、今も大好きで……。今だからこそ、彼女の支えになりたいんです」

「……」
「お願いします」

 まっすぐとつばめちゃんの両親に頭を下げる。
 正直、今、こんなこと言うべきではないのかもしれない。

 でも、何とかしたかった。
 彼女のこと、すべてどうにかしたかった。


 少しして、院長が息を吐く音が聞こえる。

「……頼む」

 僕は、はい、と強く頷いた。

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