燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「未来ってことは、あたしはタイムスリップしたの⁉ 夜、自分のベッドで寝ただけなのに?」
くるくる変わる表情で、そんなことを言う。
僕は正直面食らった。
それは最初に会ったときの、高校生の時の彼女の雰囲気にそっくりだったから。
彼女は中学までの記憶しかないといい、実際、これも夢だろうだと言い出した。
僕は少し迷ったが、彼女になんとなく話を合わせる。彼女がそう思うなら、これは夢ということでも良いかと思ったのだ。
すると、彼女は突然、驚くことを言った。
「だから婚約者が未来のあなたって、都合のいい夢見てるのよね」
「……え? 病院のこと覚えてるってこと? 僕とつばめちゃんが初めて会ったのはつばめちゃんが16歳の時だよ。覚えてるのは15歳までの断片的なことって言ったよね?」
「違う。もっと前に会ってる。断片的だけど、覚えてる記憶の中に拓海がいる」
「拓海、助けてくれたわよね? 病院の近くの公園で木から降りられなくなったところで……」
「え?」
自分の記憶をひっくり返して、考えてみる。
すると一人の女の子の顔に行き当たった。