燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「あぁ! もしかして、あの時、木から降ってきた子⁉」


 高校に入ってすぐ、公園のそばを歩いていたら『たすけて』って声が聞こえて、
 突然、女の子が木から降ってきたことがあった。

 でも、その子は無事でけがもなかったこともあって、
 僕はすっかり忘れていたのだ。

 その子が、小学生の頃のつばめちゃん……。
 僕はその事実に心底驚いた。



「未来のあたしも覚えてなかったのね。それに拓海も、あたしだって気付いてなかったのね?」

 恨みがましい声でつばめちゃんが言う。
 たしかに大人のつばめちゃんも忘れていたことだろう。

 なんて言ったって、つばめちゃんは小学2年の時のことだ。


 目の前のつばめちゃんがむくれるような表情を見せる。
 それをみて、やっぱり本当のことなんだ。と腑に落ちる。

 だってつばめちゃんは嘘を言っているようには見えないし、
 自分の記憶もそう言ってるのだ。

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