燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
視界がぼやける。
そうか、嬉しすぎても人って泣けるのか。知らなかった。
恥ずかしくなって思わず顔をそらした。
そんな僕の顔をつばめちゃんは遠慮なくのぞき込む。
「どうしたの? え? なんで泣くの? 年よりは涙もろいの?」
「年よりって……僕まだ33だよ」
「十分年じゃない」
「まぁ、中学までしか記憶ない子からすればそうか」
つばめちゃんがそっと僕の涙を手で拭う。
僕はそのしぐさにどきりとした。
「はは……心配させてごめん。ただ、嬉しいなって思っただけから」
「……そう? なら泣いてないで笑わないと! あたし、拓海の笑顔、好き。大好き!」
その声、レコーダーにとって、何度も聞きたい衝動に駆られる。
好きな人に好きだと言われることがこんなに嬉しかったのか。これも知らなかった。