燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「うん。ありがとう。つばめちゃん」
「つばめでいいわよ。呼び捨てで」
「え?」
「クラスでも呼び捨てだし。あたしも拓海を呼び捨てだし。しかも拓海はあたしの婚約者なんでしょう?」
そう言われてドキリとする。
いいのかな。ずっとそう呼びたかった、その名前を。
―――今になって。こんな状況になって……。
僕は唇を噛み、息をのむと、
「……つばめ」
戸惑いながら彼女の名前を呼ぶ。
彼女が、子どものような笑顔で、ニイ、と微笑んだ。
その瞬間、彼女と何かつながったような気がした。