燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「そういえば、中学の先生が、司馬遷が好きでね。『燕雀安んぞ~』ってやつ、教えてくれてね」

 彼女が言う。

「『燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。』かな?」
「そう、それ。意味はよくわかんなかったけど、燕雀って、ツバメとスズメのことでしょ? そのせいかスズメには親近感あるの」
「ははは」

 思わず笑ってしまった。
 本当の意味を知ったら、ヘソを曲げそうだな、なんて思って。

「何笑ってんの?」
「いや、どっちもかわいいよね。ツバメも、スズメも」
「えへへ」

 つばめは満面の笑みで微笑む。
 僕はその笑顔を見るたびに嬉しくて、そして、少し悲しくなった。

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