燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 彼女はあの事件のことをすっかり忘れているようだった。
 もう二度と、思い出させたくない。

 毎日、そんな気持ちが降り積もって行った。



 ただ一つ、一つだけ引っかかっている部分。
 それは、犯人がまだ捕まっていないこと。

 もし、彼女と会うようなことがあれば……
 彼女がどうなってしまうのか、想像すらしたくなかった。


 僕は彼女の笑顔に突き動かされるように、
 彼女のスマホから、彼女の知り合いをすべて洗い出していた。


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