燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「なにがどうしてそうなったの」
「私も詳しくは知らないのよ」
「えぇ?」
思わず私は母を見つめる。
そんなことある?
「でも、2人は同棲しだして、お父さんも言っていた通り新しいお医者さまもきてくださって、天馬先生も少しは休めるようになって……入籍した」
「そう、なの?」
「そういえば少し長い休みを取って二人で旅行に行ってたわ。それで一気に親密になった感じだったような」
やっぱり親密。
なんだ、親密って。なにがどうなったら親密なんだ……。
悩んでいると、
「正直、見ているほうが恥ずかしくなるくらい仲良かったわよ」
それを聞いて、ふぇっ⁉ と変な声が出る。
なにそれ。こわい。周りが恥ずかしくなるくらい私と天馬先生が仲いいなんて、全く想像がつかなくて怖い。
私は恋して我を忘れるなんてことは決してないと思ってた。いや、すくなくとも3か月前までは全くなかった。
「だからそれが信じられないんだよ」
そもそも私はそんな恋愛バカではない。
恋愛映画やドラマ、恋愛小説は大好物だが、自分をヒロインに置き換えて見ているというよりは、目の前の二人を応援するのが好きなのだ。
―――そう、天馬先生と一条先生を見るように。