燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「つばめちゃん、思い出したみたいだな」
次の日の朝、工藤が言う。
話しを聞くと、
どうやら、一条と大熊さんが一緒の時に思い出しようだった。
「やっぱり、思い出してたか……」
「え?」
「様子がおかしいから。前まではつばめは自分から飛びついてきてたけど……今は僕が少しでも触れるのも怖がる」
やっぱり、思い出させちゃダメだったんじゃないか……。
つばめはそれを受け止めきれないでいる。
―――何で神様はこんなに意地悪なんだろう。
最近、そればかり考えている。
『悪いことをしたら悪いことが起こる』、何度も聞いた言葉だ。
だけど、実際はそうではない。
どれだけいい人間だって、急に事故に遭って亡くなることもあるし、
どれだけ他人に優しい人間だって、酷い目に遭うこともある。
それとも自分が、彼女の婚約者になった自分が
こんな人間だったからなのか……。
もう考えるのも嫌になって、
いつのまにか、また、犯人探しにのめりこんでいた。
そのころには、彼女と連絡を取ったことのある男で、
連絡が取れない人間が絞り込めてきていた。
可能性のあるやつは3人で、僕はその3人の顔も素性も全部調べて、
それを何度も何度もにらみつけるように見つめていた。