燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 つばめはもう一度目を覚まして、色々検査をしたが、特に身体にも脳にも異常はなく、
 ただ『事件の記憶』と『3か月間の記憶』だけが綺麗になくなっていた。



 深夜、工藤がつばめの病室にやってくる。
 僕はそのとき、つばめの横にずっとつきそっていた。

「……大丈夫か?」
「あぁ、つばめはよく眠ってる」
「じゃなくて、天馬は、大丈夫か?」

 工藤は眉を寄せて僕を見た。
 工藤にまで心配かけてる自分がなんとなく情けない。


 僕は笑ってスマホを取り出すと、

「……今気づいたんだ。3か月間のつばめからきてたメール。『あたし、拓海と結婚出来て良かった』だって。最後がこれって、つばめらしいよね」

と言う。


 結局3か月間の記憶を持つつばめは、
 直接、さよなら、もなしに僕の前からいなくなってしまった。

 つばめの記憶の奥底に沈んでしまった。

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