燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
それから、先ほど見つけた、つばめのスマホを取り出す。
「それはつばめちゃんの?」
「あぁ。こっちには『おもいだすな』ってメッセージが残ってた、つばめから、大人のつばめへのメッセージ」
「……そう」
「これは明日、お母さんから渡してもらう。3か月前のつばめは、きっと実家のほうが身近だから。お母さんもだいぶ落ち着いているし……」
僕は眠るつばめの手を握った。
「それがいいかもね……」
「これからまた、つばめは苦しむかもしれないな」
「また、同じこと繰り返すつもりか?」
工藤の問いに僕は首を横に振った。
「……いや、つばめの作ってくれた記憶を、僕は信じるよ」
あの事件の記憶は、きっと、彼女が一緒に持っていった。
最初に愛し合った夜のことを思い出すと、そんな感覚だけが僕に残されていた。
彼女の最初は、あの日、あの夜だった。
僕が少し乱暴に彼女を抱いた、あの夜のことだ。