燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 ここは、外科にほど近い病院内の書類倉庫だ。

 あれから少しして、私はまた病院の手伝いをするようになっていた。といっても、外国籍の患者さんが増え続けていたこともあり、私は院内の対応担当で、他にもう一人、外の手続きなども対応できる人を雇うことになった。これを決めたのは次期病院長である天馬先生と、現病院長の父だ。

 でも確かに院内だけでも手いっぱいの状態だったので、私はそうなってよかったなぁ、と思っていた。よりゆっくり一人一人に向き合うことができる。

 そんなわけで、私は、今日はそこで必要な書類をとろうと、書類倉庫の棚に手を伸ばしていた最中なのだ。

 台を使えばきっと早かったのだろうが、台が見当たらず、そこで人に聞けばよかったのだけど、それもなんだか申し訳なくて、頑張ればきっととれるだろうと、そのまま無理に手を伸ばしたら、見事なまでに書類の束が自分に降ってきたというわけだ。


 全くどうってことない事態だが、
 ただ、見つかってしまったのが天馬先生。

 これが良くない。
 絶対に良くない。

< 302 / 350 >

この作品をシェア

pagetop