燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 何よ、その甘ったるい顔。
 恥ずかしくなって私は顔をそらして、またアイスを一口、口に入れる。

「天馬先生は、私のこと甘やかしすぎだと思います」
「え?」
「買い物行っても荷物一つ持たせてくれないし、小さな怪我でもすごく心配するし、私より絶対先に起きてるし、好きなものばっか買ってくるし」

 私は怒っているふりをして言う。
 でも、全然怒ってない。むしろ嬉しい。

 ただ、なんだかいつも気恥ずかしいのだ。



 天馬先生はクスリと笑って、

「つばめがちゃんと甘えないからだよ」

と言った。

「十分甘えてるつもりなんですけど」
「そう?」
「はい」

 それからアイスをもう一口食べる。


「でも、やっぱり、私は病院と患者さんが一番大事だから。いつだって天馬先生にはそっちを優先してほしいし、私もそうしたいです」
「つばめらしいけど……。だからいつまでたっても、僕はつばめのこと、甘やかすんだよ」


 天馬先生が言って、私が顔を上げた時、
 天馬先生の唇が私の唇と重なった。次の瞬間、ぺろりと、唇を舐められる。


「つばめ? もっと甘えて。僕がいないとダメになってしまうくらい」


 どういうこと?
 ちゅ、ちゅ、と何度も交わされるキスの合間、先生が言う。


「僕はね、どんなつばめも、全部、永遠に愛してるんだ」


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