燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「つばめ! なんでいるの? どうして?」
天馬先生の冷えた声が聞こえる。
「え……それはあのー、検診? かな?」
私は目をそらしながら答える。
そんなやりとりを見ていた患者さんたちは、楽しそうな顔でこちらを見ていた。
(なんで誰も助けてくれないのーーー!)
天馬先生は目を細めて私を見ると、
「そんな見え透いた嘘ついて……。どうせ仕事しに来たんでしょ」
とまた、冷えきった声で言う。
「ちょっとだけです。ほら、マルコさんの件、気になったから」
「少し待ってて、一緒に帰る。夜勤だったし、午前だけピンチヒッターだったから」
「えぇ、5分の距離くらい一人で帰れますよ!」
「だめ」
ぴしゃりとそう言われて、私は言い返せず、そのまま外科の椅子に腰を下ろす。
するとそこにいた看護師の向井さんや、クラークの山下さんまでクスクスと笑っていた。
ほんの少し前まではこういうのは非常に恥ずかしかったのだけど、
最近は少しだけ慣れてきた。
なぜかというと、私は最近一つ、やらかしてしまったのだ。