燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 私が言うと、拓海は心から嬉しそうに笑って、頷いて、
 私の頬を愛おしそうに撫でる。


「僕はね、小さな頃みたいにわがままでヤンチャなつばめも、病院を守ろうと必死で大人になった優しいつばめも、どっちのつばめも愛してるって……キミに伝えたかった」


 そして、と続けた。



「僕はつばめの『運命の人』になりたかったんだ」



 だから私があんなわがまま言ったとき、とっても嬉しそうにしたの?
 あの時のあたしがそうだったから。

 拓海はゆっくりゆっくり時間をかけて、私を愛して、甘やかして、
 あたしの記憶がいつでも戻ってこれるように、全部を積み重ねてきてくれたんだ。


「ありがとう、拓海。大好き!」


 私はそう言うと、自分から拓海にキスをして、
 それから二人、目が合って笑い合う。

 拓海はそのまま私のことを、強く、強く、抱きしめた。



<END>

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