燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 式次第も順調に進み、食事も進み、お酒も進み、最後にウェディングケーキが切られ配られた時、天馬先生は私にそれを渡して、

「つばめ、これも食べる?」
「ありがとうございますー」

と私は受け取った。
 もぐもぐとただ食べているだけなのに、天馬先生は、

「かわいいなぁ」

と微笑む。すかさず一条先生が、

「ちょ、鼻の下伸びすぎ! ってか、つばめちゃんじゃなくて、新郎新婦見なさいよ!」
「文句あるならこっち見るな」

 二人が小競り合いを始めた。
 こういうのにもずいぶん慣れた……。



 いつも思うのだけど、天馬先生、子どもでもできた日には、
 顔面が崩壊しそうだけど大丈夫だろうか。

 そう思って、頭を振る。

 私は子どもが欲しいという気持ちもほんのりありながら、
 まだ病院でやりたいことも増えてきていて、子どものことを先延ばしにしていたのだ。

 天馬先生も結局私に甘いので、それを苦い顔をしながらも受け入れてくれている。

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