燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「つばめ」
 突然、ぎゅう、と後ろから抱きしめられる。

「ひゃっ!」
「ずっとこうしたかった」

 耳元でそんなことを言われて、私の心臓は限界まで速くなった。
 おかしい。

 おかしいおかしいおかしい!
 そもそも私は先生にドキドキしたり、男性として何か感じたことなんてなかったじゃない!

「せ、先生」

 ぎゅう、と目を瞑る。
 私がピクリとも身体を動かせないでいると、

「ごめん、思い出せないって言ってるのにこんなことして」

と先生は言う。でもそう言いながら、先生の腕の力は弱まらない。
 結局、先生は抱きしめるのをやめる気はないんだよね……とはなぜか言えなかった。


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