燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「私、全然、そんな風には父から聞いてなかったんですけど」

 婚約は父が決めたことだと思い込んでいた。だって、まさか天馬先生が言いだしただなんて思いもしなかったから。


 私が驚いていると、さらに天馬先生は続ける。

「毎回のあのデートもキツかったよ。だって触れることすらできなかったし」

 それは覚えてるけど、と私は首をかしげる。
 別に触れちゃいけないとか、なかったわよね?

「……え、なんで」
「そりゃ、自分が制御できなくなるからだ」


 私は天馬先生が私に指一本触れないから、『病院を継ぐために仕方なく政略結婚する』って姿勢なんだと確信してたのだ。

 でもそれが違った?

―――なんで今、そういう事言うの……。


< 48 / 350 >

この作品をシェア

pagetop