燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
「私、全然、そんな風には父から聞いてなかったんですけど」
婚約は父が決めたことだと思い込んでいた。だって、まさか天馬先生が言いだしただなんて思いもしなかったから。
私が驚いていると、さらに天馬先生は続ける。
「毎回のあのデートもキツかったよ。だって触れることすらできなかったし」
それは覚えてるけど、と私は首をかしげる。
別に触れちゃいけないとか、なかったわよね?
「……え、なんで」
「そりゃ、自分が制御できなくなるからだ」
私は天馬先生が私に指一本触れないから、『病院を継ぐために仕方なく政略結婚する』って姿勢なんだと確信してたのだ。
でもそれが違った?
―――なんで今、そういう事言うの……。