燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


 私は覚悟を決めて口を開く。

「そんなだけだった人に抱きしめられて、ドキドキして、でも安心して、いろんな感情がごちゃまぜで……。私どこか、おかしいのかなって思ってます」
「……つばめ」


 先生の顔がやけに近づいてきて、私は慌てて、わぁ! と顔をそらす。
 こ、これはまさか……。いや、確実に……。


「ちょっ! ま、待って……」
「なに?」

 先生はきょとんとした様子で言う。
 いや、ほら、ナチュラルすぎるだろ!

 いま、キスしようとしたなーーー⁉


 ナチュラルにキスとかしようとするな!
 そういえば、病院でも『キスする』とか言われたような。

 っていうかね、何この流れ!
 世の中の夫婦はこんなにナチュラルにキスとかしてるの?

 なんだか、すっごい恥ずかしいんだけど!
 それにさっきからさらに胸が痛い。


< 54 / 350 >

この作品をシェア

pagetop