燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

 私が慌てて返事をすると、天馬先生は楽しそうにクスクス笑った。
 っていうか聞かなくても、きっとそうなんだろうなぁって思うのは、天馬先生の距離感のせいだろうか。

 なんだか、複雑……。
 でもこれだけはきっぱりと言っておかないと。



「でも、私は今、天馬先生とそういうことできないですから」

 私が言うと、先生はまたあまりにショックそうな顔をするので、私は良心が痛む。

 私は言い訳するように、
「ごめんなさい、記憶が戻るまで、少しだけ。きっとすぐ戻ります。だから待ってて」
と言う。

 きっと記憶が戻ったら当たり前にできるだろう。
 まぁ、それはそれでなんだか複雑だけど……。


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