燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~

「え? どうしました?」

 いい方法だと思ったんだけど。先生はなにか不満だろうか?
 先生はそのまま目線をそらすと、

「ええっと……少しやらなきゃいけないこともあるから、先に休んでおいて? あと、僕のことは気にせず寝ててね。つばめは、今、体を休めることが大事なんだし」

と言う。

 私はなんとなく腑に落ちないながらも頷いた。
 そして一人ベッドに入る。

 先生は優しく私の髪をなでると、おやすみ、と額にキスをしそうになって、そして、慌てて途中でそれを辞めた。
 私は何となく、そうしてほしかったな、と不埒なことを考えて、目を瞑った。



 天馬先生は優しい。こうやって私のお願いしたこと、ちゃんと守ろうとしてくれてる。
 私、結婚相手が、そして、覚えていないけど、色々と最初の相手が天馬先生で良かったのかもしれない。

 そんなことを考えていたら、なんだか眼が冴えてしまって、結局ほとんど眠れないまま窓の外は真っ暗になっていた。

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