燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


「病院から呼び出し。ちょっと行ってくる」
「……はい」


 複雑な気分の自分がいる。
 ほっとした? それとも残念だった?

 自分でもそれがどっちか分からない。


「ちゃんと戸締りして寝るように」
「子どもじゃないんだから、それくらいわかってますよ。早く行ってください」
「心配だな」

 そう言った先生は、額に、ちゅ、と口づけた。

「っ!」
「行ってきます」

 私はキスされた額を手で抑えながら、

「さっき電話鳴らなかったら……危なかった」

とつぶやいていた。


 さっき電話が鳴らなかったらどうなっていただろう。
 私と先生、きっとキスして、それ以上も……。

 そう思ってガシガシ頭を掻く。

 先生の嘘吐き!
 『記憶戻るまで待ってて』って言ったら、『わかった』って言ったじゃん!

 まったくもう!
 この結婚生活、全然油断ならない‼

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