聖女の曾孫
「……いいんだ」
「え?」
地面に伏せながら、ミトリィ伯爵が潤ませた目をこちらに向けた。
「あなたの気持ちが私に向いていなくても、いい。ただあなたの傍に、居られたら……それで、よかった。嫌いでいい」
「ミトリィ伯爵……」
「もう一度でいい……一目、会いたかった。あなたの声が聞けて……幸せだ」
「連れて行け」
背後からヴァクーニが厳しく命じる。
私は連行される元婚約者を見つめながら、先ほどとは違う悪寒に震えていた。
私を好きでなくてもいい。
ただ傍にいたい。声が聞きたい。あわよくば名前を呼んでもらいたい。
怒っていてもいい。優しくなくてもいい。
ミトリィ伯爵の言葉は、ヴァクーニを想う私の想いと同じだった。
「……」
私も、あんなふうに気持ち悪いのだろうか。
大問題だ。