聖女の曾孫
「ごきげんよう、コーネリア」
「ごきげんよう、伯爵」
「お散歩の帰りですか? コーネリア」
「ええ。大司教様も、よい午後を」
すれ違い様に挨拶を交わしながら、宮廷のなかで比較的日の当たらない、黴臭い、そして寒い書庫に着いた。
「ただいま、帰りました~よ♪」
ギイィ……。
重い扉を押し開ける。
書庫は書架の隊列と書架の壁、壁、壁……と、昏く芳しい素敵な雰囲気で私を迎えた。3階分の吹き抜けになっていて、梯子を使って回廊部分へあがるごとに書物の年齢もあがっていく。
「フルグアス」
「あら、ヴァクーニ様。ごきげんよう」
書き物机の小さな地球儀に指をかけ振り向いた男性。
ヴァクーニ・ハイリューゾフは、チムール侯爵家の5男で、物心ついたときには既に爵位継承を諦めて、宮仕えに生涯を捧げる決意をしたという、生粋の仕事人。私を姓で呼ぶ、数少ない人のひとりだ。
そして私の初恋の人……。
そして運命の、ひ・と♪
「ごきげんよう、伯爵」
「お散歩の帰りですか? コーネリア」
「ええ。大司教様も、よい午後を」
すれ違い様に挨拶を交わしながら、宮廷のなかで比較的日の当たらない、黴臭い、そして寒い書庫に着いた。
「ただいま、帰りました~よ♪」
ギイィ……。
重い扉を押し開ける。
書庫は書架の隊列と書架の壁、壁、壁……と、昏く芳しい素敵な雰囲気で私を迎えた。3階分の吹き抜けになっていて、梯子を使って回廊部分へあがるごとに書物の年齢もあがっていく。
「フルグアス」
「あら、ヴァクーニ様。ごきげんよう」
書き物机の小さな地球儀に指をかけ振り向いた男性。
ヴァクーニ・ハイリューゾフは、チムール侯爵家の5男で、物心ついたときには既に爵位継承を諦めて、宮仕えに生涯を捧げる決意をしたという、生粋の仕事人。私を姓で呼ぶ、数少ない人のひとりだ。
そして私の初恋の人……。
そして運命の、ひ・と♪