聖女の曾孫
「遅かったな。また勇者崩れに捉まったのか」
「ええ。でも撃退したわ」
小さい頃から宮廷に仕えている者同士、旧知の仲で私たちの間には壁らしき壁もない。他人には同僚と表現するしかないけれど、私は運命だと確信している。
「申し立てさえすれば、すぐにでも接近禁止命令を出すぞ」
彼は〝王の天秤〟という二つ名を持つ、有能な執政官だ。
「いいの。そこまで無下にしたら可哀相だもの」
「それが聖女の慈悲か」
「ふふ。私は、あくまで聖女の曾孫ですから」
机を回り込んで、彼と向き合う。
そう。
冒険なんて、もうずっと昔に終わった時代の話。